8. ネクローシスを制御するミトコンドリアの孔
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清水重臣, 辻本賀英
キーワード
permeability transition(PT), cyclophilin D, 心筋梗塞
ネクローシス
細胞が物理化学的に強いストレスに曝された際や虚血再灌流傷害などの際に観察される
虚血再灌流傷害の一因は、ミトコンドリア内外膜の透過性が激しく亢進するpermeability transition(PT)と呼ばれる現象である
最近、PT誘導に必須の分子であるcyclophilin D(CyPD)のノックアウトマウスが作製された
CyPDノックアウトマウスは正常に出生発育し、機能的、形態学的な異常はない
CyPDノックアウトマウス由来の種々の細胞にさまざまなアポトーシス刺激を加えたところ、いずれも正常にアポトーシスが誘導された
一方、正常マウス由来の細胞にカルシウム過負荷や活性酸素などのPT誘導刺激を加えた際には、細胞はネクローシスの形態を呈して死に至ったが、この細胞死はCyPDノックアウトマウス由来の細胞においては顕著に抑制された
この際にはアポトーシス実行に必須であるカスパーゼの活性化は観察されず、カスパーゼ阻害剤による細胞死抑制も見られなかった
これらの事実により、PTがネクローシスの一因となっていることが明らかとなった
実際、CyPDノックアウトマウスを用いて心筋梗塞モデルや脳梗塞モデルを作製したところ、正常マウスに比して、その傷害は明らかに緩和された
PTに関しては、梗塞以外にも、一部の神経変性疾患や動脈硬化、発がんなどの原因となっている可能性が報告されている